001.世界の起源を説く

「古事記」「日本書記」

世界のどの民族も例外なく、この世がどのように姿を現してきたかの由来を語る物語をもっている。

そのような物語は「神話」と呼ばれ、人間を含めたこの世界のありとあらゆる存在の起源を、神々の物語として語り出す。

それらは本来、神々を祭る何らかの儀礼の場で語られ、口頭で伝えられたものと考えられるが、やがて文字に書きとめられるようになる。

ギリシア神話や、天地創造の物語などで知られる『旧約聖書』は、その著名な例であるが、日本でも『古事記』『日本書記』という二つの古代文献が神話として知られている。

『古事記』は、それまで各地に伝えられていた相互に矛盾する神話伝承を整理して、国家的に正しい神話を五世に伝えたいという天武天皇の意思を受け、稗田阿礼が語る伝承を大安麻呂が書き記して、和銅五年(七一二)に完成した。

そのため、一貫したストーリー性をもち、読み物として楽しく読める内容となっている。

一方、『日本書記』は養老四年(七二〇)に古来の伝承を収集して編まれたものだが、『古事記』が稗田阿礼という一人の語り部の口述を記したのとは異なり、中国各王朝の正史を手本につくられた国家の歴史書であり、さまざまな伝承を一貫したストーリーにまとめることはせず、相互に矛盾する内容をもつ複数の伝承も、そのまま「一書」(異伝)として紹介する形をとっている。

このように性格の異なる二書だが、そこに記されている神話の内容は、登場する神々の名前や表記に相違が見られるものの、基本的には共通しており、両者を合わせて「記紀神話」と呼んで同列に扱うのが通例となっている。その概略は、次のようになっている。

①天と地の分離とその際に生じた神々について語る天地開闢の神話。

②続いて生じた七柱の神々の最後にイザナギとイザナミという夫婦神が生じ、この二神が国土と神々を生み出したことを語る国生み・神生み神話。

③火の神を生んだ際の火傷がもとでイザナミが亡くなったため黄泉国を訪ねたイザナギが、醜い姿に変じたイザナミを見て逃げ帰り、禊をしたときに生じた天照大御神と須佐之男命の対立を軸に展開する高天原神話。

④高天原kら追放された須佐之男命が移った葦原中国の出雲を主たる舞台として、大蛇退治から始まり、その子の大国主神の事跡を軸に話が展開する出雲神話。

⑤高天原から葦原中国の支配権を譲るように求められた出雲の大国主神が、その申し出を承諾して高天原の支配に従うことを誓う国譲りの神話。

⑥高天原からニニギノミコトが日向の高千穂の峰に天降り、葦原中国の統治を行うことになったことを語る天孫降臨の神話。

⑦ニニギノミコトから神武天皇に至る日向に生まれた神々の神話。

⑧神武天皇が日向から熊野経由で大和に入り、支配権を確立したことを語る神武東征の神話などである。

これらのなかには、神話の枠を超えて芸能の素材としても活用され、広く知られるようになったものもある。現在も全国各地で演じられている「神代神楽」と呼ばれる神話劇形式の神楽では、「岩戸開き」や「大蛇退治」などが、代表的な演目となっている。

また、より現代的な文化として、記紀神話を題材にした日本的なミュージカルの試みやゲームへの応用もなされている。

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