005.宇摩志阿斯詞備比古遅神(うましあしかびひこじのかみ)

葦の芽のような強い生命カの象徴

『古事記』では宇摩志阿斯詞備比古遅神(うましあしかびひこじのかみ)、『日本書記』では可美葦牙彦舅尊と表記される。『古事記』では、天地創成(開聞)にあたり、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神ら造化三神に続いて出現した神。造化三神や、次に現れた天常立神ととに別天神五柱の一神であり、配遇神のない独神として身を隠した。『日本書紀』では神代上・第一段、第二・第三・第六の一書(異伝)に登場し、第二・第三では天地開闘の最初に、第六では国常立神に続き二番目に化成した神である。

『古事記』や『日本書紀』第二の一書はこの神を、「国(大地) がまだ水に浮かぶ脂(あぶら)のように固まらず漂っていたとき、葦牙(葦の芽) のように萌(も)え騰(あ)がる物によって成った神」とする。

ちなみに葦の群生する湿地は、古くは水田を開くに適した豊かな土地として好まれた。そして、このアシカビ (葦牙)を中心に、前にほめ言葉であるウマシ (宇摩志・可美)、後に優れた男性を指すヒコヂ (比古遅・彦舅) がつけられた神名からは、この神が、まだ安定した状態にはなかった国 (大地) の固有の生成力・生命力の強さを、旺盛に伸びる葦の芽に象徴させて神格化した男神であることがわかる。

そして、この神の次には「天の礎(いしずえ)」ともいえる天常立神(あめのとこたちのかみ)が登場する。とすれば、この宇摩志阿斯詞備比古遅神斯とは、大地から萌えあがって「天の礎」を形成する力と考えるのが自然であろう。つまりこの神は、大地の一部が天上へと萌えあがり分離し、その生成力・生命力によって「天の礎」が形成されたことを告げているのである。

日本の国の神話的名称が葦原中国(あしはらのなかつくに)であり、国づくりを完成させた国津神(くにつかみ)の主神の大国主神(おおくにぬしのかみ)の別名が葦原醜男(あしはらのしこお)であるように、葦は日本の国づくりと関係がある。阿斯詞備此古遅という神名のあり方自体が、間接的だけれども葦原中国の豊かな将来を暗示しているのである。      (潰砂)

 

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