004.神産巣日神(かむむすひのかみ)

生命の復活と再生をつかさどる

「古事記」冒頭の天地創生神話に登場する、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)とともに成った造化三神(ぞうかさんしん)の最後の神。神産巣日御祖命(かむむすひのみおやのみこと)との別名がある。また、三神に宇摩志阿斯訶備比古遅神、天常立神を加えた別天神五柱の一神でもあり、他の別天神同様、独神として身を隠した。「日本書紀」には神皇産霊尊とある。

神名は、美称の「神」に、「ムス=産業・産」(生ずる・生成する)と「ヒ=日・霊」 (神霊)が続いたもので、「神々しくも神聖な生成の霊力」との意味である。高御座巣日神ともに生成力を神格化した存在であるが、高御産楽日神が「天」と強くかかわるのに対し、この神は「地」との関連               が強い。この場合の「地」は、葦原中国(あしはらのなかつくに)=現実世界(現世)だけでなく、広い意味で根堅州国(ねのかたすくに)や黄泉国(よみのくに)など、死者がおもむく他界(幽界(ゆうかい))をも包摂(ほうせつ)している点が注目される。それゆえ、この神のもつ生成力は、「地」が舞台の出雲系神話のなかで生命の蘇生復活をつかさどるなど、死との相関(死、死の世界からの復活・再生・援助) において表現される場合が顕著である。

『古事記』に見える五穀の起源神話によれば、大気都比売(おおげつひめ)の屍体(したい)から生じた稲麦などから五穀の種をもたらした御祖神(みそかみ)(母神)であり、大穴牟遅神(おおなむらのかみ)の受難に際しては、兄神に謀殺(ぼうさつ)された大穴牟遅神を二度にわたって復活させる。また、大国主神の国譲り神話では、常世国(海の向こうの他界)の少名毘古那(すくなひこな)の御祖神として登場し、行き詰った国づくりを少名毘古那に支援させる。これらのエピソードからは、死と強くかかわるこの神の地母神(ちぼしん)的性格を垣間見ることができる。 『日本書紀』では一書(あるふみ)に名が見えるだけで登場は少ないが、「出雲国風土記(いずものくにふどき)」では各郡に御子神の名が記され、「古語拾遺(こごしゅうい)」には紀値(きのあたい)の祖としての記述が見られる。また『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』では、この神を祖とする出雲系氏族が少なくない。 (濱砂)

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